「音楽の美しい宇宙」|音楽を視覚からアプローチする楽典(アルケミスト双書)

みなさんこんにちは。
サウンドクリエイターの山内結です。
これまで私のブログではオススメの音楽、映画、アプリ、そしてお茶(主に紅茶)などをご紹介させていただきましたが、新しく「書籍」というジャンルのオススメもご紹介していきたいと思います。
第一弾目は、こちら!「アルケミスト双書」シリーズの「音楽の美しい宇宙」です。
なんとも神秘的な本のタイトルではありますが内容はいたって論理的。
まずは、本書をシリーズ展開しているアルケミスト双書についてご紹介していきます。
あらゆる不思議な事象を題材とするアルケミスト双書
図書出版 創元社の「アルケミスト双書」シリーズですが、この本の内容が実に面白いのです。
まさしく五感を揺さぶる世界の謎を題材とし、エビデンスを添えて説明していく。といった感じ。
今回ご紹介する「音楽の美しい宇宙」の他にも「黄金比」「進化論の世界」「元素の不思議」や「ケルト模様の幾何学」に始まり、「ストーンヘンジ」「リトル・ピープル」などといったような、これって答えを算出できちゃうの?といったような未知の領域までも網羅。
1冊あたり60〜100の図版が掲載されており、現在32種類出版されています。
内容はもちろんのこと、表紙から挿絵まで美しく、全て揃えたくなるようなシリーズ展開となっております。
「音楽の美しい宇宙」という神秘的タイトルの楽典
まず冒頭部分から始まる以下の文章が大変素晴らしかったのです。
音楽は、耳でのみ知覚でき、心でのみ受け入れられる、人間の内面を表現する芸術媒体である。音楽を理解しようといくら厳密なアプローチを試みても、そこには常に何かが欠けている。それは、音楽理論が本質的に、すでにある音楽を説明するだけのものであり、音楽を事前に規定するものではないからだ。つまり、実践された音楽の傾向を観察し、そのあとで分析や分類が行われるだけなのだ。旋律、リズム、和声を形作り、それを紡ぎ合わせて意味のあるタペストリーに仕上げるのは、人間の心や精神である。音楽には、個人の直接経験やその心象風景が染み込んでいる。
「音楽理論が本質的に、すでにある音楽を説明するだけのもの」
これが大事だと思うんですね。対象の傾向を観察し分析は出来る、しかしそれは既存の音楽に通用するもの。
何故なら、旋律、リズム、和声を形作り、それを紡ぎ合わせて意味のあるタペストリーに仕上げるのは、人間の心や精神であるから。
まさしく、それこそが他にはない音楽が持つ素晴らしい価値なのです。
このような、なかなかのドライ具合から始まる音楽理論ということで、なおのこと内容に説得力が生まれます。
左:マウリッツ・エッシャーの挿絵。エッシャーと言えばオランダの画家として有名であるが、その手法は錯視の使用であったり、数学的または工学的なアプローチによるだまし絵などが多かったことから本書とのコンセプトに通ずるものを感じる。同シリーズから出版されている「錯視芸術」の表紙はエッシャーの代表作「昼と夜」である。
とにかく挿絵がとてもユニークで、音を視覚化させるという非常にありがたい手法を交えながら本書は展開されていきます。
音楽理論という知識をある程度インプットしている音楽家にとって、本書はとても有効であると感じました。
音楽理論上はこうなるのだが、もう少し掘り下げて何故そうなるのかを説明しましょう、といった具合。
音楽を今一度深く知りたいという追求したいという方にオススメの書籍です。
ご興味を持った方はぜひ手にとってみてくださいね!
「音楽の美しい宇宙」
著者 ジェイソン・マーティヌー
翻訳 山田 美明
著者のプロフィール
サンフランシスコ音楽院卒、同学院非常勤講師などを歴任。
さまざまな楽曲のアレンジをするとともに、プロのピアニストとしても活躍している。
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図書出版 創元社|アルケミスト双書Webサイト
https://www.sogensha.co.jp/special/alchemist/